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139月 2019

心に残る映画

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むかし「キネマの神様」(原田マハ)という本を読んだ。
そのなかで、頼りない主人公の父が、映画の評論にかけては抜群のセンスを発揮し、それをネット上に載せるとすごい反響がでて海外の映画マニアたちともつながり…という物語だった。

面白いのは、この父は飲んだくれで生活力に乏しく、家族からも頼りにされてない。
何より、自分が映画評論のセンスがあるなんて微塵も思っていなかった点だ。好きこそものの上手なれ、か。

 

多彩な俳優陣も映画の魅力

シネマといえば、黒沢明の「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」など、何度見てもワクワクする。
三船敏郎や志村喬の存在感は、抜群である。

小津安二郎の「東京物語」「麦秋」での笠智衆のいぶし銀のような名演もいい。

山田洋二の「男はつらいよ」に出てくる下町の気の置けないやりとり、若いころの倍賞千恵子は美しい人ですね。

ちょっとアクが強いけど、「座頭市」シリーズの勝新太郎の演技もなかなか魅せる。

 

映画を通じて抱く様々な感情

いっぽう、SF映画では、小さいころ街の映画館で見た怪獣映画「ガメラ対ギャオス」「ゴジラ対キングギドラ」など、どきどきしながら映画館でみたのを思い出す。

「エイリアン」では、密室の宇宙船内で一人ずつ殺されていく状景がすごく怖かった。

宮崎駿の「風の谷のナウシカ」からは勇気を、「となりのトトロ」からは子供時代の瑞々しい感情をもらった。
庵野秀明の「エヴァンゲリオン」の世紀末の設定には度肝をぬかれた。

デヴィッド・リーン監督の「ドクトル・ジバゴ」はロシア革命に翻弄される貴族を描いた名作で、ラーラのテーマとロシアの美しい風景が印象的だ。
海が割れて脱エジプトを果たすユダヤの民を描いた「十戒」も、小学校のときに映画館でみた迫力はすごかった。

 

記憶の中で輝く「私だけの映画」

そういえば、あの頃の巨大なスクリーンを前にした興奮が、いまのシネプレックスでは感じられないのはなぜだろう。
レンタルビデオで自宅で見る映画も、あのときの高揚感とは全然ちがう。

それは、未知の物語世界に映画館にいるすべての人が引きずり込まれる、あの浮遊感覚の欠如ではないだろうか。
その場が一瞬で違う世界へ飛翔する、あの不思議な浮きたつような感覚。

できることなら、もういちど小学生のころ通ったような映画館のなかで、映画を見てみたいと思う。

淀川長治さんの日曜名画劇場も懐かしい。
「さよなら、さよなら、さよなら」のいつもの挨拶と映画への愛情にあふれていたあの笑顔。
「懐かしい」ばかり連発すると、年とったね、といわれそうだ。

でも、読書以上に異世界を体験できる映画というメデイアは、記憶の中にしっかり根をおろして、思い出すたびに、登場人物たちの躍動感が目の前にうかんでくる。

実に映画とは、記憶の中で「私だけの映画」として星座のように輝いているものかもしれない。

 

Author: 谷口 晋一


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