シネメデュケーション授業報告:映画「下街ろまん」を観て語る会
さる8月17日に地域枠学生6名と専攻医1名を対象に、映画「下街ろまん」を観て、地域のつながりと健康を考えるオンラインでのシネメデュケーション授業を開催しました。シネメデュケーション(cinemeducation)とは、cinema(映画)を観てmedical education(医療教育)につなげるという試みです。
本作品は、うつ病に陥った大学院生がある女性との出会いをきっかけにして、地域の人々との「ゆるいつながり」を通じて回復していく物語です。以前、私が東京の谷根千(谷中・根津・千駄木)で地域プロジェクトを実践していた際、仲間たちと地域の人々の協力を得て、協働して作り上げた短編映画です。かねてより、自分で作った映画を自分の授業で教材として使ってみたいと妄想していましたが、それが今回実現して感慨ひとしおでした。
映画を観おわり、グループに分かれて対話しました。
「冒頭、女性が書いてくれた名刺、一杯のコーヒー、誰かの一言、日常の小さな事が染みるなあ…」
「映画見て印象的だったのは民生の表情の変化だった。祭りのシーンも、たまたまあったから…という制作秘話も聴けて良かった」
「地元から大学・就職で、気の置ける人とのかかわりは少なくなる。ストレスが発散できない状況でうつ病が発症したりするのかな。そういったときに、居酒屋のおじさん達なんかとお話しすることができて心のゆとりを感じていくのは大事」
「誰かが自分の方を向いている、ということが大事。それがいろんな方向に重なり合って人は生きていける」
などの感想を聞くことができました。
教員のほうからもこんな感想が出ました。
「価値観の違う人と共存していて何が悪いんだ?都会での人とのつながり方が新鮮だった。田舎にはホームレスがいない、なぜなのか?どんな人も目的や幸せを持って生きている。学生さんにはいろんな人と話して価値観を入れて大きくなってほしい」
「高齢になると、より地域でのつながりを意識するようになるのかな。独居高齢者をみたりして近所づきあいのおかげで困らずにやっていけてる、と言う話をよく聞く。一方で、ひとり暮らしで不安だ、と言う声も。近所とのつながりが、命に直結するのかも」
人のつながり、ソーシャル・キャピタルと健康、都市と地方の違いなどのテーマとともに、日常における「些細なこと」の大事さ(誰かの一言やまなざし、居酒屋での会話など)も対話から感じられた会となりました。
参加してくれた皆さんに感謝もうしあげます。
(孫)