在宅看取り時の医師の感情的経験に関する原著論文が公開されました。
Journal of General and Family Medicine誌に「The experience of providing end-of-lifecare at home: The emotional experiences of young family physicians(在宅で看取ること:若手家庭医の感情的経験)」という原著論文が掲載されました(フリーで全文公開されています)。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jgf2.571
- 本論文のキーポイントは以下の通りになります。
- 若手家庭医12人に在宅看取り時に直面する感情的経験についてインタビューして質的分析(テーマ分析)を実施
- 主な結果として【終末期の話し合いにおける困難】【医師の感情】【医師としての役割】【家族とのコミュニケーション】【終末期ケアにおける肯定的側面】の5つのドメインが抽出された
- 本研究の新規性として、医師も看取りにおいて恐怖などの感情を感じており、その対処に葛藤していること、看取りにおいて肯定的側面も感じていること、ご遺体に触れるなど「看取りの作法」による癒しがあること、在宅看取りにおいて(病院看取りに比べて)より温かい雰囲気があること、などが挙げられる
- 本研究の限界としては、比較的サンプル数が少ないこと(従って理論的飽和には達していないこと)、対象が日本人医師に限られていることなど
- 考察において、医師が遺体に触れることの文化差について、映画「おくりびと」を例に挙げながら少しだけ論じています
ちょうど在宅看取りをテーマにした映画『うちげでいきたい』を上映中ということもあり、それと合わせて在宅ケア/在宅看取りやACP(アドバンス・ケア・プランニング)に関する考察をさらに深めていければと思っています。
(孫大輔)