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132月 2025

『新薬と臨床』誌に論考「人文学がもたらすプライマリ・ケアの深みと広がり」が掲載されました

『新薬と臨床』の最新号に、「人文学がもたらすプライマリ・ケアの深みと広がり」という論考が掲載されました。この内容は、2024年度のプライマリ・ケア連合学会オンデマンドシンポジウムの内容を書き起こしたものです。私の話は「プライマリ・ケアに、なぜ人文学か?」と題して、プライマリ・ケアにおいては人間の「生活世界」に関わる「行為」(アレント)としてのケアがなされること、また患者をどのような存在として捉えるかという「人間観」が重要になることなどから、哲学・人文学の知が役に立つだろうということを導入的に論じました。

今回の共通テーマは「弱さ」でした。哲学プラクティショナーの松川えりさんは「弱さを抱えた主体として〜哲学対話の実践から〜」と題して、対話の中で主体性が回復していくことなどが語られました。また宗教学者の井川裕覚さんからは「仏教は”弱さ”といかに向き合ってきたのか?」というお話が語られました。仏教はまさに「弱さ」と向き合ってきた思想であること、そうしたものと臨床との接点においてグリーフケアがあることなどが語られました。哲学者の高橋在也さんからは「スピノザ哲学と罪責感の癒し」と題して、スピノザの倫理と自傷・セルフネグレクト行為をする人の罪責感の関係について語られました。

最後には共同司会の横田雄也さんを交えて、5人で「「弱さ」をどう捉え、どう「ケア」していくか」というパネルディスカッションを行いました。その中でキーワードとなったのが「ままならなさ」と「無力の自覚」でした。いかに「無力さ」や「ままならなさ」と向き合うのか。そこに「ケア」の本質があり、人間がもつ「弱さ」のケアにつながるのではないか。また、そのような洞察において人文学の知が大いに役立つのではないかという話となりました。

(孫大輔)

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