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73月 2025

第2回インドネシア研修PART⑤ 現地医療機関と専門職連携教育(IPE)を視察しました

スマランでの実習4日目です。午前中はRSND(ディポネゴロ国立病院)を訪問し、その後二つの班に分かれてEye クリニックとディポネゴロクリニックを訪問しました。RSNDでは、救急室(ER)、皮膚科・眼科・総合診療科を含む外来を視察しました。インドネシアの公的医療保険は、支払額に応じてクラスI〜Ⅲに分類され、クラスごとに利用できる病室が異なります。この病院では、クラスI(支払額が最も高い)は個室、クラスⅢ(支払額が最も低い)は3人部屋となっています。

 外来見学の際には、ディポネゴロ大学の先生からインドネシアの患者紹介システムについて説明を受けました。インドネシアでは、患者はまず「プスケスマス」と呼ばれる地域ごとに割り当てられた診療所を受診し、必要に応じて小規模病院に搬送されます。そこで最大3日間の治療を受け、症状が改善しない場合にのみ、より高次の医療機関へ紹介されます。一方、症状が改善した場合は自宅に戻り、必要に応じて最初に受診したプスケスマスで外来治療を継続します。特に印象的だったのは、このシステムでは治療期間が最大3日と定められていること、そして患者が自宅療養へ移行した際には、最初に受診したプスケスマスが診療を継続する点です。診断や治療のデータは電子記録として管理され、診療所と高次医療機関の間で確認が可能なため、紹介・逆紹介のシステムがしっかりと確立されていることを実感しました。

 2つのクリニックのうち、私はEyeクリニックを訪れ、眼科専門の診療と手術の現場を視察しました。このクリニックでは、外来診療に加えて白内障手術などの眼科手術も行われていました。日本では、小学校で毎年視力検査を含むスクリーニングが実施されますが、インドネシアでは専門医の不足により、毎年の検査は難しいのが現状です。特に地方では、小学校に専門医が派遣されないこともあると聞きました。日本では専門医が身近な存在であるのに対し、インドネシアではGeneral Practitioner(一般医)は多いものの、専門医が不足しているという医療システムの違いを実感しました。

 午後からは、IPE(Interprofessional Education:専門職連携教育)の現場を視察しました。今回は、妊婦のいる家庭と、子どもの発育阻害が課題となっている家庭の二つに分かれて訪問を行いました。私は妊婦のいる家庭を訪問し、現地の学生チームは、医学生2人、看護学生2人、栄養学生1人の計5人で構成されていました。今回は薬学や歯科の学生はいませんでしたが、場合によっては彼らもチームに加わることがあるそうです。今回の訪問は2回目であり、栄養学生が中心となって妊婦の食事について聴き取りを行っていました。学生たちは互いの専門分野を尊重しながら家庭のアセスメントを進め、薬学の学生がいない場合は、自ら薬の知識を補いながら対応するなど、臨機応変に役割を補完し合っていました。また、妊婦本人だけでなく、家族全体の健康課題や受診行動についても聞き取ることで、妊婦を取り巻く環境全体を把握しようとしている点が印象的でした。家庭訪問の後は、研修メンバーで情報共有を行いました。どちらの家庭でも、「学生が訪問することについてどう思うか」という質問に対し、「学生に何でも質問できるので嬉しい」という共通の回答が得られました。地域住民が学生たちを信頼し、彼らが一専門職としての役割を果たしていることを強く感じました。

 最後になりますが、私たちの「地域に密着したプログラムを見学したい」という希望に沿う形で研修内容を再調整してくださった先生方のおかげで、昨年よりさらに住民と学生の関わりを見ることができました。この場を借りて心より感謝申し上げます。

明日はいよいよスマランでの最終日となります。思い残すことがないように、学生一同しっかりと学びを深めていきたいと思います。

医学科5年 廣田歩実

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