「ゆるい読書会@とっとり」をもとにした研究論文がCureus誌に掲載されました(10月13日)
このたび、鳥取大学医学部 地域医療学講座で継続してきた「ゆるい読書会@とっとり」をもとにした研究論文が、国際誌Cureusに掲載されました。
タイトルは “Fostering Reflection and Empathy: The Impact of Book Discussions on Medical Students’ Education”(Son D, Nakayama S, Taniguchi S. Cureus 17(10): e94433, 2025)です。
本研究は、医学教育における読書会の意義を検討した質的研究で、2020年から2022年にかけて鳥取大学で行われた全19回の読書会の記録をもとに分析を行いました。この読書会では、『ペスト』(カミュ)や『苦海浄土』(石牟礼道子)、『ドライブ・マイ・カー』(村上春樹)など、多様な文学・哲学・社会科学の書物を学生と教員が共に読み、語り合いました。
分析の結果、読書会が学生に与える効果として、
- 多様な視点への気づき
- 自己省察と考えの言語化
- 複雑なテーマ理解の深化
- 心理的に安全な対話の場の形成
- 社会的・倫理的課題への感度の向上
- 知的刺激と楽しさの経験
という6つのテーマが抽出されました。
これらの結果から、読書会が医学教育における「共感」「倫理的思考」「対話力」といった非認知的コンピテンシーを育む貴重な場であることが示されました。特に、上下関係を超えて自由に語り合える「心理的安全性」が、学生が安心して考えを深めるための重要な条件となっていました。
「ゆるい読書会@とっとり」は、医療人文学教育の実験的な場として始まりましたが、学生たちが自分の言葉で「医療と人間」を考える姿から、多くの学びを得ました。この活動が国際的に紹介される形となったことを大変うれしく思います。
(孫)
論文情報
Son D, Nakayama S, Taniguchi S.
Fostering Reflection and Empathy: The Impact of Book Discussions on Medical Students’ Education.
Cureus. 2025; 17(10): e94433.
DOI: 10.7759/cureus.94433
https://doi.org/10.7759/cureus.94433


