最近の話題になっている人工知能(AI)を体験し考えること
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最近、人工知能(AI)の進歩が頻繁に話題に挙がるようになってきました。私がこの文章を書いている時点では、一般に使用できるチャット型AIでは医療に関する確実な判断は出来ないので私が医療業務でAIを使うことはまだありません。内科学会の講演会でもAIとの付きあい方について取り上げられており、将来的には医療に特化したAIが出現する可能性に言及されていました。AIが医療に及ぼす影響については、正直私にはまだ分かりません。今回は私なりにチャット型AIを使って感じたことを書きます。
ChatGPTを試す
端的に書くと、AIの価値は使用者である人間側の要因に拠るところが大きいと感じました。私は最初ネットニュースでChatGPTの存在を知り、試しにいくつか質問をしてみました。著名人のことや、有名な大学入試問題を答えられるか、といった質問です。簡単な質問には正しく答えてくれますが、質問が複雑化すると間違いも混じっている印象でした。ネット上では、ChatGPTはプログラミングや文章を書く能力に優れていると書いてありました。そして私が試しに使った無料のChatGPTはGPT-3.5というタイプで、それよりも発展したGPT-4をMicrosoft Bingに登録すればチャット機能のみ、1日あたりの使用回数制限ありの条件付きで、無料で使えることも知りました。プログラミングのことは全く分からないので、文章を書く方でいろいろ試してみることにしました。
GPT-4に「密室トリックを題材にした2000字程度のミステリー小説を書いて下さい」と入力すると、古典的な密室トリック(窓の隙間から伸びた糸をドアの鍵に巻き付けて窓の外から糸を引っ張ると鍵が回収できて密室が出来る)を使った2000字程度の文章が返ってきました。感心した一方で、目新しさは特にありませんでした。他には、医者が他の病院に送る紹介状を書けるか試してみましたが一般的なビジネスメールと同じような文章が作成され、そのまま流用できる感じではありませんでした。ただこれは私がもっと上手に条件を指定すれば現時点のAIが書いても、より本物の紹介状に近づくかもしれません。そして次に「中学生の少年が同じクラスの少女に告白する小説のプロットを一緒に考えましょう」と入力しました。上記のChatGPT(GPT-3.5)に同じ質問をすると、いきなり教室で少年が少女に告白する場面から始まりOKをもらって話が完結する簡単な短い小説が作成されました。GPT-4の場合は「少年と少女の関係がどのように近づくのでしょうか。それを考えないとストーリー性が生まれません。それから、少年と少女はどんな性格なのでしょうか。」と返ってきました。そこで自分なりに考えて「少年は明るくてクラスの中心にいるような子。少女はおとなしい性格。少年がたまたま少女の秘密を知って、2人の関係が近づく展開はどうですか」というぼんやりとした案を入力すると、AIから「少女は正体を隠して活動しているアイドルもしくは作家で、それを少年が知ってしまう展開はどうですか」と返ってきました。作家の方が私にとってはしっくり来たのと、その設定なら少女が自分の小説に登場させたいキャラクターがちょうど少年の性格と共通しており、少女にとっては単なる取材目的で少年との交流が始まる展開に出来る、と思ったので「少年が図書館でたまたま小説を書いている同じクラスの少女と出会い、そこで少女が有名な小説家の正体だと気づく。そこから2人の交流が始まる、という案はどうですか」と入力すると「それは良いと思います」と返ってきて、私とAIの相談で1つのアイデアが出来ました。数日後に改めて自分だけで考えると、少女が小説家であるという設定よりも、顔を隠して活動している動画配信者という設定の方がより現代的かなとも思いました。
なぜこのチャットを紹介したかと言うと、AIがいきなり素晴らしいアイデアを出してくれるのではなく人間側のアイデアがAIの補助によって改良される経過を示した簡単な例だと思ったからです。もしかしたらAIが提示したアイドルや作家という設定も、AI自身が考えたのではなくインターネット上の膨大な既存情報の中から抽出されたものかもしれません。ただそのヒントを得て、私はぼんやりとした物語案を更に具体化できました。
使用者のためAIの役割
私はこのブログのような文章は比較的書きやすいのですが、物語文を考えることは苦手です。複数の登場人物達の心情や行動理由を考えることはエネルギーが要るからです。その点では自分の苦手分野をAIに補ってもらったとも言えます。もし私がより発想力豊かな人間なら、もっと面白い設定を思いつきAIに問いかけて更に面白いものにできたかもしれません。使用者の資質に合わせてAIの役割は変わり、AIに丸投げするよりも、どう使ったらより良い成果に繋がるのか人間側も考え続けていく必要があるのだなと感じました。
Author:今岡 慎太郎
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