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2310月 2020

地域医療学講座と行く!バーチャル『訪問診療』

鳥取大学地域医療学講座発信のブログです。
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ある町の病院で、とりだい病院研修医1年目の浜田が地域医療の研修を行っている。そこで初めて経験する訪問診療の一場面……

浜田 「とりだい病院の浜田と申します。今日の往診、ご指導よろしくお願いいたします。」

医師 「よろしく!今日の訪問診療は、小坂ナヲさんを含めて4軒行くんで、カルテ(診療録)を予習しといて!」

浜田 「わかりました~。」

 

血圧やコレステロールを下げることよりも重要なこと

車の中で……

浜田 「小坂さんのカルテを拝見したのですが、いっぱい病名があって、びっくりしました。」

医師 「小坂さんはもともと高血圧、コレステロール、心房細動があり、ちょっと貧血もあったかな?以前は肺や大腸の病気もしたんだけど、最近は太ももの骨を2回折って入退院を繰り返しているんだ。骨粗しょう症予防の注射も受けていたと思う。」

浜田 「これらの病気、みんな往診先で診るんですか?」

医師 「通常は、血圧、コレステロールを下げ、脳こうそく予防の薬を飲んでもらって、おしまい!って思うでしょう……。これだけでは小坂さんの家にお邪魔する意味はないんだ。」

浜田 「???」

 

 

末永く家でいきいきと生活するため、知恵と工夫をこらす!

医師 「訪問診療の目的は、この方が末永く家でいきいきと生活するために医師だけでなくいろいろな人が知恵と工夫をこらし、患者さんと家族を支え続けること。そのために、家や通所先などで何を行うか、毎月『計画』することが必要なんだ。」

浜田 「往診とどこが違うんですか?」

医師 「患者さんが調子が悪いときに、臨時に診察に行くことが『往診』……。この家、庭がきれいでしょ?花づくりは小坂さんの生きがいで、元気な時はしゃがんで一人で世話してたらしい。今は、中学校の先生をしている娘さん夫妻の役目らしいけどね。」

浜田 「患者さんに関する知識量がすごいですね!」

医師 「こんにちは、小坂さん。〇〇病院です。」

小坂さん 「はーい。開いてますから入ってください!」

 

 

食生活、排泄など、あらゆることに気を配る

ベッドに腰かけていた小坂さんは、笑顔で私たちを迎えた。

小坂さん 「なかなか来てごしならんで……。待ちくたびれましたわ(笑)。」

医師 「今日は忙しかったんでごめんね。調子、どうですか?」

小坂さん 「今日はデイサービスに行って、たくさん話して、体操して、ご飯がおいしいし、お風呂に入らせてもらって……。毎回楽しみです。」

医師 「ちょっとベッドの横に立ってみましょうか……。すごい。うまく立てるようになってよかった!」

小坂さん 「この前、骨折で入院したときに、家に手すりを付け、段差をなくしていただいたので、トイレまでなら難なく歩けます。」

医師 「研修医の先生がいるんで、彼に診察させてください。」

浜田 「はじめまして。米子から来ました、研修医の浜田です。よろしくお願いします。」

丁度、近所に住む娘さんが家に入ってこられる。

医師 「最近、大便の出はどうですか?」

娘さん 「薬を変えてもらってしっかり出るようになったそうです。心持ち、体重が増えました。」

医師 「デイサービスの連絡ノートによると、最近は36㎏を上回ってますね。」

娘さん 「昨日は頑張って食べ過ぎて、咳き込んだみたいですが……。」

医師 「このように足腰が悪くなった人が二度と足を折らないようにするためには、栄養をつけ、できる範囲で体を動かしてほしいです。

高齢の方には、便秘があるかどうかを聞くことが重要です。便がお腹に溜まるだけで食べられなくなり、腸へいそくで入院する人もいらっしゃいます……。浜田先生、お腹の診察はどうだった?」

浜田 「平坦で柔らかく、腸の動く音も問題ありませんでした。」

医師 「それはよかった。 小坂さん、くれぐれもこけないように気を付けてね!」

小坂さん 「入院すると何か月も帰れないし、娘にも迷惑かけるので、もう入院したくないです。」

 

 

ていねいな診察と人々による支え合いが重要

帰りの車内で……

浜田 「この患者さんにとって最も重要なことって、『骨折予防』ですか?」

医師 「その通り!今度骨折して、本当に寝たきりになってしまうと、肺炎や床ずれからの感染で患者さんが苦しむことになる。なので、骨折せず、自分で動ける状態をできるだけ長く保ちたい。」

浜田 「そのために、医師の役割は何でしょうか?」

医師 「体調を崩す原因がひそんでいないかさぐるため、とにかくていねいに診察すること。そして、いろいろな人からの情報をもとに、この人に今後懸念されることを予測して、素早く手を打つこと。重要な情報を見落として、患者さんが入院してしまうと申し訳ない。」

浜田 「そのために、多職種連携といって、いろいろな人が協力して患者さんと家族を支えることが必要なんですね。」

医師 「(ちょっと優等生すぎるが……)そういうこと!医師もいろいろな人によって支えてもらっていることに感謝しないとね!じゃあ、次の患者さんの家に行こう。」

 

つづく。

 

 

Author: 浜田 紀宏


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