論文「Phenomenology in Primary Care」がJournal of General and Family Medicineに掲載されました(10月10日)
このたび、昨年の日本プライマリ・ケア連合学会(JPCA)オンデマンドシンポジウム「現象学するプライマリ・ケア」をもとにした論文が、Journal of General and Family Medicine に掲載されました。
論文タイトルは “Phenomenology in Primary Care: Integrating Phenomenological Insight Into Clinical Practice and Research”(Yokota, Son, Sakakibara, Nishimura, Taniguchi, 2025)で、岡山大学の横田雄也先生を筆頭著者に、鳥取大学地域医療学講座の私(孫大輔)、東京女子大学の哲学者・榊原哲也先生、東京都立大学の看護学研究者・西村ユミ先生、当講座の谷口晋一教授との共著によるものです。
本稿は、プライマリ・ケアにおける「現象学的視点(phenomenological insight)」の意義と応用可能性を論じたレター論文であり、医療者が患者の「生きられた経験(lived experience)」に立ち返ることの意味を問うものです。
シンポジウムでは、哲学者・看護学者・医師がそれぞれの立場から現象学を臨床・教育・研究にどう生かせるかを議論しました。特に「エポケー(判断中止)」という概念を通じて、医療者が科学的・客観的な態度を一時的に括弧に入れ、患者の「世界のあり方」に立ち戻ることの大切さを確認しました。また、患者と医療者がともに意味を再構築する対話的な実践として、現象学がプライマリ・ケアにもたらす可能性を示しました。
今回の論文は、その議論を整理し、国際的に発信した初の成果となります。現象学が医療現場の「もうひとつの言葉」として、複雑で不確実な状況を理解するための新たな手がかりになることを願っています。
(孫)
論文情報
Yokota Y, Son D, Sakakibara T, Nishimura Y, Taniguchi S.
Phenomenology in Primary Care: Integrating Phenomenological Insight Into Clinical Practice and Research.
Journal of General and Family Medicine. 2025; 0:1–2.
DOI: 10.1002/jgf2.70074


