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246月 2024

短編映画「どうして空は青いのか」完成報告:医師のウェルビーイングを考える

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 2024年4月から医師の働き方改革の新制度が施行されました。それに伴い、医師の長時間労働やメンタルヘルスが話題になっています。これまで、医師あるいは医療従事者のウェルビーイングについては、根本的な対策が実施されてきませんでした。これを機に、エッセンシャルワーカー(生活必須職従事者)である医療者のメンタルヘルス対策やウェルビーイング向上にも関心が高まることを期待しています。

2015年の日本医師会による調査では、医師の6.5%に中等度以上の抑うつ症状があり、さらに3.6%の医師に自殺リスクがあるという結果が報告されました。人々の健康を支えるはずの医師がなぜ、健康を損なってしまうのでしょうか。その背景には、責任の重さや長時間労働といった環境要因に加えて、医師自身の健康について相談先が少ないという状況もあります。今後、働き方改革に伴う勤務時間制限やタスクシフトに加えて、中立的な相談先を増やしていくなどの対策が求められています。

また、医師たちへの意識啓発も重要と考えられます。基本的に医師はメンタルヘルスに関しての医学的知識は持っているはずです。しかし、心身のSOSサインに気づかなかったり、またうつ病による認知の偏りのため、自分の抑うつ状態に気づきにくかったりします。今回、私たちが制作した短編映画「どうして空は青いのか」は、そうした医療者自身へのメッセージも込めた作品となっています。

 

 

映画「どうして空は青いのか」は、監督・脚本を私がつとめ、約半年間の制作期間を経て2024年5月に完成しました。ストーリーは、海辺の街で訪問診療に従事している若い医師・中田が主人公です。彼は最近、不眠や肩こり、集中力の低下といった症状に悩まされていました。そして、あることをきっかけに先輩医師の谷村に、うつ病ではないかと指摘されますが、それを素直に受け入れられません。妻の香織や谷村、同僚の看護師が心配する中、はたして中田はどうなるのか……。

 

 

制作は、地元鳥取・島根のスタッフ・キャストを中心に行い、実際の医師や看護師にも出演してもらっています。日本医学教育学会の地域医療教育を専門とするチームに助言をしてもらいながら、私がこれまで聞いたり経験したりしたことをもとにして、脚本を書き上げました。主なロケ地となった在宅医療クリニックは、私が非常勤で働いている医療法人寛謙会です。エンディングには地元の歌手・奥田さやかさんの歌を使わせていただきました。私が前回制作した「うちげでいきたい」(2022年, 40分)は在宅看取りをテーマにした映画でしたが、今回の映画でも「(最期まで)うちげにおりたい」という在宅療養中の高齢女性が登場します。同じような状況設定ですが、今度は医師を主人公にした30分の作品となっています。今後、動画配信サービス等で広く視聴できるように公開する予定です。医療者教育の教材としても活用していただけますし、一般の方にも通常の映画として楽しんでもらえると思います。

 

映画『どうして空は青いのか』予告編
https://youtu.be/kgkFpfEsf2o
本編映像(無料公開中)

映画『どうして空は青いのか』(2024年制作, 30分)

【キャスト】 荒川明範、谷口純一、渋川あかね、小畠寿子、大石健夫、上野莉子、瀬尾勇仁 

【スタッフ】 監督・脚本:孫大輔、助監:瀬尾勇仁、撮影・編集:吾郷克彰(ONE DAY)、録音・整音:奥田隆(sumasu)、照明:孫佑菜、小道具・衣装:新山功三郎(bows cast agency)、ポスター・ロゴデザイン:河原朝子・池口玄訓、メイク:吉岡ゆかり 

【音楽】 「オルゴール」 作詞:奥田さやか 作曲:小林有希子 

【企画協力】 安井浩樹、谷口純一、岡崎研太郎、尾原晴雄、後藤理英子、小比賀美香子、杉村政樹、高橋慶、田中淳一、山本さゆり 鳥取大学医学部 地域医療学講座 

【ロケ地協力】 医療法人寛謙会 在宅ケアクリニック米子、ホームベースドケア訪問看護ステーション、越野里美 

【撮影協力】 中山早織 

【制作】 日本医学教育学会 地域医療教育部会

 

Author:孫 大輔


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