ゆるい読書会@とっとり:『太陽の子』を読む
9月度のゆるい読書会を開催しました。参加者のお1人に感想を寄せて頂きましたのでご紹介します
今回の課題本は灰谷健次郎さんの『太陽の子』という児童文学です。5名の参加者でゆるくお話しました。
太平洋戦争の終戦から30年後の神戸市を舞台に、沖縄県出身の父と母を持つ小学校6年生のふうちゃんが、父の精神疾患をきっかけに沖縄戦や沖縄出身者の置かれた立場や受ける差別、心情に触れていく様子が描かれています。
舞台は、ふうちゃんの父母が営む神戸にある沖縄料理屋。そこで、昭和感溢れる人情劇が繰り広げられます。参加者からは、あたたかくて良いなと思う反面、「こんなに強固すぎる仲間のつながりは、自分が入るとなるとちょっとしんどいかも?」という声も。
差別を受ける側の人たちは、痛みを知っているから人に優しい。集団で集まって冷たい外の世界に抗おうとする姿は、同和問題ともつながる部分を感じたとの意見もでました。
また、ふうちゃんのお父さんの精神疾患は一体なんだろう?と話は医療にも及びます。この小説が書かれた頃(1978年)は、まだPTSDの概念がなく、今のこの人に現れている症状が、何十年も前の出来事が原因であると考えられていなかった――など、時代背景による疾患の捉え方の変化も考えるきっかけになりました。
私は、この『太陽の子』を小さい頃から何度も読みました。大人になって改めて読んで、一人の少女の物語の周りに、沖縄からの集団就職、沖縄出身者への不当な差別、貧困、基地問題、戦争によるPTSD…などたくさんの社会的な問題が描かれていることに気づかされます。
沖縄の悲惨な現実を知っている大人たちは、大好きなふうちゃんに沖縄の悲しい話はせずに美しい沖縄ばかり語ります。しかし、ふうちゃんは苦しみながら、時には嗚咽しながらも、ちゃんと沖縄の真実と向き合おうとします。そんな姿に、美しい癒しのスポットという側面だけではない沖縄の現実を間接的に描く作者の深い思いを感じました。
(助産師・コミュニティナース 中山早織)