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47月 2022

デザイン思考とは???-問題解決についての考え方-

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 2021年4月に大山町国民健康保険大山診療所の所長になりました。1年が経過して、なんとなく地域にもなじんできたような気がしています。気がしているだけなので、本当にそうかはわかりませんが……。

それと平行して、2020年に入学した京都芸術大学大学院修士課程で研究を続けました。その修士課程を2022年3月に無事修了することができました。この大学院は完全オンラインで、1人の教員の先生方や同級生にリアルで会うことなく芸術学修士(Master of Fine arts)を取得することができました。

この大学院で学んだものは、デザイン思考という問題解決の考え方です。デザイン思考では、【共感】【定義】【アイデア】【プロトタイプ】【テスト】のステップをチームで踏みます(図1)。研究成果は以下のURLに公開されていますので、ご興味のある方は覗いてみてください。興味深い同級生たちの研究も紹介されています。井上は、エンジニア・地域づくりの専門家・デザイナーの同級生とチームを組んで、【社会人のオンライン学習環境における心地の良い居場所を実現するためのツールの開発】に取組みました。

○京都芸術大学通信制大学院芸術研究科芸術環境専攻学際デザイン研究領域 研究 https://bit.ly/3NNAj2P

 

 

 

 

デザイン思考とは?

デザイン思考でいうデザインは、「問題解決」と定義しています。「問題解決」は医療現場・家庭・地域・学校などどこでもだれでも「問題解決」は行われています。ですので、デザイン思考はデザイナーだけのものではありません。

デザイン思考が活きる問題は、「厄介な問題」です。ですので、「この感染症に効く抗生剤は何か」「大山診療所はどこにあるか」みたいなシンプルな問題には必要のない思考です。「地域住民さんの居心地が良くなるような地域はどのようなものか」「9060問題に医療はどのように関わっていけば良いか」など人によって回答が異なるであろう「厄介な問題」のような問題を解決するためにデザイン思考は活きます。今回、井上が修了した大学院でも多様なバックグランドを持った人達がチームを組んで、デザイン思考のプロセスを踏み研究を進めました。ただ、順調にこのプロセスを踏むことは全くありませんでした。うねうねうねうねチームで議論し、行ったり来たり、チームの雰囲気がぎすぎすしたり、図1にあるようなステップを一方向的に進むことはできませんでした。うねうねうねうねいろいろなものを取り入れたり、捨てたりしながら進むことの重要性が言われています。この大学院の教員である早川克美教授は、「調べたもの、考えたアイデアのうち9割は捨てなさい」とゼミでしつこく言われていました。同級生が開催してくれたデザイン思考の研究会でも、「デザイン思考を実践してみてアイデアが収束していかないのは、情報量が足らないことで起こることがわかった」だという意見も出てきました。アイデアを100個・1000個考えていき、それを捨てることでいろいろアイデアが混ざり新しいモノが生まれるんだなあと今実感しております。デザイナーの方々はここを身体化してやっておられると思いますが、非デザイナーの人たちはここを避けずにやる必要があると考えています。

 デザイン思考を実現するためのあり方は、カミル・ミヒレウスキが以下の5つに要約しています。デザイナーに共通する態度や文化についての特徴となります(サービスデザインの教科書:共創するビジネスのつくりかたより)。

①不確実性や曖昧さを受け入れる

②ユーザーに共感を寄せる

③五感を駆使する

④遊び心を持って取り組む

⑤複雑性から新たな意味を創りだす

 これらの特徴を眺めてみると、科学的思考が重要など考えがちな医療者が実践するには案外難しいんじゃないかなあと感じています。特に医師は、状況をできるだけ早く把握しつつ、同時にどのように治療を行うか判断し実行するトレーニングを繰り返し行います。そのため、①の「不確実性」や「曖昧さ」からいち早く脱出する状態を作るくせがついています。目の前の問題によっては、意識的にデザイナー思考のあり方を思い出すことも重要なのかもしれません。

 これまでデザイン思考について書いてきましたが、デメリットもあります。手間や時間が掛かる、産みの苦しみがあるなどです。ですのでどんな場面でも適応できる考え方ではありませんので、そのことはお伝えしておきます。井上もまだ大学院を修了したばかりなので、楽しく実践しもっと身体化していきたいです。

Author:井上 和興


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