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241月 2020

言葉の力

鳥取大学地域医療学講座発信のブログです。
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私たちの教室の名前は、「地域医療学講座」というものである。
この講座は、そもそもなんなんだろうなあと最近谷口教授と悩んでいる。対話しながら、悩んでいる。

[地域=土地の域?][医療=医学と治療?][学=学問?学校?][講座=講堂で座る?]と分解してみた。
分解してみて、眺めてみるとわかるかなあと思ったが、結局なかなかつながりが見えない。なんでそんなわからないものに自分が首を突っ込み始めたのか、またさらにわからなくなってしまった。

が、わからないからこそ面白いのかなあとは思う。ただ、そもそも私はせっかちで、すぐに答えを求めて、安直に人生を進めてきているようにも思う。いろいろなことに興味がパッとわくが、それが長続きしない。

物事には一回は触れようと思っている。また、触れ合って興味が湧いたものは深掘りをしようと決意はする。
しかし、深掘りしている過程のなかで、ほかの物事に興味を持っていかれる。結局、深掘りする時間を自分自身に与えていないことが多い……。

笑顔は人をひきつける

この文章を書く前に読んでいたのは、埼玉大学経済経営系大学院の宇田川元一先生の『他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論』という本であった。この本と初めて出会ったのは、アマゾンであった。

アマゾンの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の欄になんども出てきていたのは、気づいていた。
カラフルな本だなあとは思っていたが、最近本を買いすぎていたので、無視していた。ただ、数日前ワークショップデザインのコミュニティで紹介をされ、結局買ってしまった……。

なぜ買ったかというと、その本を紹介していたひとが楽しそうに語っていたからかなあと振り返った。
私は、「笑顔のコーチングファシリテーター」なる資格を持っているので、笑顔になっているひとの語りを聞いていると、とても惹かれてしまう(理由にはなっていないかも……)。

それは何でなんだろうといままで深くは考えたことがなかったので、いま考えてみた。
「このひとなんで笑ってるんだろう?」という素朴な疑問と「その笑いに巻き込まれたい」という欲望があるからなのかなあという言葉が頭に浮かんできた。
でも、結局はびびっとくる、というか直感的に笑顔っていいなあと感じているからなんだろうなあと思う。

大切にしたい感覚

本題に戻して(本題なのか?)、この最近読んだ『他者と働く「わかりあえなさ」から始める組織論』には、組織の厄介な問題を解消していくために、対話の価値とその実践のプロセスについて解説している本である。

対話とは、新しい関係性を構築していくためにナラティブ(解釈の枠組み)の溝に橋を架けることとされていた。実践プロセスは、「準備→観察→解釈→介入」の4つのプロセスを紹介されていた。ナラティブというのは医療の界隈でもいろいろと話題が出るとことではあるが、組織論の中でも語られるんだなあと感じながら、読み進めた。読み進めていき、最後のほうに行き着いた。

そのとき、宇田川先生が「ここまで読んでくださった方にお伝えしたいことは3つあります。ひとつは、焦らずに、着実に歩みを進めていってほしいということ。もうひとつは、逆境の中でもへこたれずに対話に挑み続けてほしいということ。そして、苦しみの中にある人に手を差し伸べてほしいということです。」と語っておられた。

この言葉と出会って、なにか知らないけど、涙が出そうになったというか、胸が熱くなったというか、あたたかい感覚を持つことができた。
それを「なんでかなあ?」と考えてみると、「対話って必要だけど、結構つらいなあ…」と思っていたからなのかなあ?とかとは考えた(患者さんとの対話もつらいときもあるんです……)。

ただ、なんだかまだ明確には言葉にできないなあと思っている。言葉にできなければあんまり人には伝えられないが、でもそんな言葉にならない言葉?感覚?そんなものをもう少し大切にしたいと思った。

ユーミンの「優しさに包まれたなら」の歌詞には、そんなメッセージがぎゅーっとつまっている。いま、猛烈に聞きたくなったので、ペン(パソコン?)を置いて、聴いてみようと思う。

 

Author: 井上 和興


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