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1712月 2021

ゆるい読書会:『「利他」とは何か』を読む

12月のゆるい読書会は、美学者の伊藤亜紗さん編の『「利他」とは何か』(集英社新書)を読みました。

伊藤亜紗さん他、哲学者の國分功一郎さんなど、東京工業大学未来の人類研究センター・利他プロジェクトのメンバー5人で執筆された一冊です。

伊藤亜紗さんも『どもる体』『記憶する体』など、身体とケアに関する分野の本をたくさん書いていらっしゃいます。

本書の問いとして「利他的な行為というのは本当に個人の意志から始まるものなのか?」「自分にも恩恵があるだろうという合理的利他性(情けは人の為ならず)は、本当に利他なのか?」「共感を軸にした利他的行為は、本当に利他なのか?」といったことです。

 

本書においては「利他」について、マルセル・モースの「贈与論」、志賀直哉の「小僧の神様」、柳宗悦の民藝運動と仏教における「不二」の考え、中動態と「意志」「責任」の問題、映画「プリズンサークル」と「言葉の回復」など、さまざまな学問・視点から議論が進められていて、知的興奮を味わえる一冊となっています。

 

今回参加した人たちからは、以下のようなディスカッションがなされました。

・「利他」がホットトピックになってきた背景には、宗教・経済に代わる新しい社会的潮流があるのか?(共感など、コミュニケーション的行為が中心になる時代)

・「責任」の二つの意味:応答責任(responsibility)と帰責性(imputability)は面白い

・日本は「臭いものには蓋をする」文化がある:刑事罰を受けた人を社会復帰させる意識に乏しいのかもしれない

・日本の戦争責任に対する意識の低さ:「主語」がない、中動態的な「責任をあいまいにする」文化と関係しているかもしれない

・映画「プリズンサークル」では、受刑者が自分の行為に対して「言葉」を獲得していく過程が見られる(応答責任としての「責任」の意識)

 

次回(2022年1月)は、上間陽子さんの『海をあげる』(筑摩書房)をとりあげます。

 

(孫)

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