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76月 2021

「だれのためにうごいています?」

鳥取大学地域医療学講座発信のブログです。
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今、あるチームで研究を進めながら、デザイン思考を学んでいます。研究チームでの議論では、コミュニティってなんだろうか、ひとのつながりってなんだろうか、みたいなことを考えながら、リサーチクエスチョンを探っている段階です。

このチームでの対話のなかで「まずは自分のためになんらかの行動を起こして、その行動を続けていくと、自分のために行っていた行動を自然にほかのひとにしたくなるんじゃない?」みたいな言葉が生まれました。これに井上ははげしく?同意をしてしまいました。なんで同意をしちゃったんだろうと考えてみたんですが、やっぱり自分が大事だし、周囲のひとも大事だし、でも自分が大事だよね……みたいなことをいつも思っているからなのかなと考えました。

 

 

今までの学びを通じて、今思うこと

井上は、自治医大を卒業しましたが、『忘己利他』という言葉を在学中よく耳にしました。自分のことは後にして、まず人に喜んでもらうことをするという意味です。自治医大初代学長の中尾喜久先生のメッセージであり、伝教大師最澄の言葉でもあります。この言葉を実践できているかと自問するたびに、「なかなか己を忘れて、ひとのためにうごくことってできてないなあ……」と罪悪感を持ってしまっている自分を認識していました。

『情けは人のためならず』みたいな言葉はみなさん聞いたことがあるのかなあと思います。情を人にかけておけば、巡り巡って自分によい報いが来るという意味です。これは結局己のために動いていることだと井上は解釈しています。『忘己利他』より、『情けは人のためならず』のほうがどうしても自分にはしっくり来てしまいますが、中尾喜久先生のお言葉をないがしろにしていいのか、どうしても自分の未熟さを感じていました。

 

 

『情けは人のためならず』の考えがもたらすこと

チームでの研究を進めるため、先行文献を調べているときに、『利他的利己主義』という言葉に出会いました。『利他的利己主義』とは、利他的に振る舞うことで自分の利益が増える見込みのある限り利他的に振る舞うこととされています(社会的ジレンマのしくみー「自分一人くらいの心理」の招くもの 山岸俊男著 サイエンス社)。これはまさに『情けは人のためならず』という言葉を学術的に表現してくれるものだなあと感じました。完全に利他的な人や完全に利己的な人は少数ながらいますが、多くの人が利他的利己主義なのかなあと想像します(←これはめちゃくちゃ私見です)。利己的な人が増えると他人からの頼み事に非協力的になり、そのコミュニティのつながりが減ります。利他的な人が増えていくと他人からの頼み事に協力的になり、つながりが増えます。完全な利他的でなくても、『情けは人のためならず』的な利他的な人が増えることで、つながりが増え、有機的なネットワークが生まれやすい社会になるような気がします。

あなたがなにかだれかに頼まれたとき、「いいよ~!」とひとこと言うことが、社会のつながりづくりにつながるカモしれません。

Author: 井上 和興


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